真似ぶ

 

 「学ぶ」の語源は「真似ぶ」である。
諸説あるようですが、そういう説もあるそうです。
真似ぶ(マネブ)?
日常的に使う言葉ではありませんね。。。

意味は「指導を受けるのではなく、模倣によって技術を習得する事」。
要するに「真似る(マネル)」ということですね。
なるほど・・・
確かに学びの方法の一つとして、真似をするというのはとても効果的な方法だと思います。

真似るというと何となくネガティブな印象を受けがちです。
物まね、パクリ、二番煎じ・・・
でも人間の進化も、科学や文化の発展も、いわば「真似る」というプロセスを経て遂げられていると言っても過言では無いですよね。
今何か壁にぶち当たっている、上手くいかなくて悩んでいる、そんな人はひょっとしたら誰かの「真似」をすることで突破口が開けるかも知れません。

 

 

 応用力

 

 

 「もっと工夫したり考えて仕事をしないと、技術的な奥深さとか応用力は身に付かないんじゃない?」
今週行われた品質会議での一幕です。
品質不良の抑止策を話し合っていた時、ある対策案について冒頭の様な話になりました。

私自身もその案についてはどちらかと言うと否定的な立場でした。
それ自体は良いんですよ。
ただそうする必要が無いと思われるものまでそうしようという話になりそうでしたので、それは全体最適とはならないんじゃないか・・・という話。

なぜそういう安直な考え方になるのか・・・
私なりに考えた結果、辿り着いたのは「そもそもの基礎が足りないんじゃないか」ということでした。
知識や経験、技術的な「引き出し」と言っても良いかも知れません。
選択肢が少ないので、最適な方法を導き出せないんじゃないか。。。

 

 最近の生産設備は、とても「お利口さん」なんです。
人手不足や技能承継への対応の為、スキルレスなモノづくりがし易いようになっています。
確かに熟練工の育成には時間も手間も掛かりますからね。
今では出来るだけ人間に考えさせたり計算させたり、判断させたりしない様に省熟練化が進んでいます。
だからそういう機械を使えば、それほど知識や経験が無くても、ある程度の作業が出来てしまうようになっているんです。

人の能力に依存する、属人的な仕事のやり方を肯定するわけではありません。
そうしたスキルレスなモノづくりは、作業効率の向上や品質の安定に大きく貢献するものでもありますから。。。
でもそれだけでは、基礎が身に付かないんですよ。
そして失敗することも少ないので、何故そうしてはいけないのか、何故そうしなければならないのかを学ぶ機会が少なくなるんです。

これは結構大きな問題なんじゃないかな・・・
今のスタッフは「こういう風にしか教わっていないから」とか「今までそうしてきたから」「前の会社ではそうだったから」というところで思考停止してしまうんです。
それが私たちには「考えて仕事をしていない」「工夫が足りない」と見えてしまうんです。
これは互いに不幸ですよね。。。

もちろんそこは今後手を打っていこうかと思っています。
教育をしていくとか公的な資格の取得を促して勉強させるとか・・・
ただね、各個人も基礎を身に付ける為に、日常的に努力はして欲しいと思うんです。
そういう向上心が無ければ、どれだけ会社が手を尽くしても大した効果は得られませんからね。

じゃあその為に何をすれば良いか・・・
まずは出来ている人の「真似」をしてみるのが良いんじゃないかと思います。
作業スピードの遅い人は効率よく仕事が出来る人の真似を、不具合が多い人は不具合が少ない人の真似を。
自分と違うやり方を真似ることで、今までと違う方法や技術を得られるはずですから。
そしてそのプロセスで、何故そうするのか・・・といった考え方も理解して、自分のものに出来るはずです。

中途半端なテクニックだけで、「やれている」という錯覚に陥ってしまってはもったいないんですよ。
より高い技術を身に付ける為にも、やはり基礎はしっかりしていないといけません。

 

 

 良いとこ取り

 

 

 「社長は本当にいろいろとよく考えてますよね。」
今週ご来社頂いた、ある取引先の方がおっしゃっていました。
その方は営業から叩き上げで今の会社の役員にまでなった方です。
ご来社された時には、よく組織論やリーダーとしての考え方、人材育成の話なんかで盛り上がってしまうのですが、
この日もそんな話をしていた流れからの言葉です。

「そうですか?自分ではよく分かりませんね」
「いやいや、だってホントに何も考えていない様な社長さんって実は多いんですよ」
「へえ・・・そんなもんなんですねぇ」

自分では自覚はありません。
というか、基本的に私は思慮深い方とは言えず、むしろ勢いとかノリで突っ走ってしまうタイプですから。。。
ただ手前味噌ですが、アイデアマンだとは自分で思います。
で、「面白そうだから取り敢えずやってみよう!」ってなってしまうんです。
上手くいかないこともたくさんありますけど、そうやってどんどん変わっていけるのが当社の良い所ですし。
以前取り引きのあった材料屋さんの次長さんも、「御社は来る度に進化している感じで、見ていて面白いですねぇ」なんて言っていたっけ。。。

 でもそのアイデアって、実はそのほとんどが私のオリジナルのモノではないんです。
そりゃそうですよね。
私はそんなに頭の良い方ではありません。
じゃあそれはどうしているのか・・・
そのアイデアは、色々な人の話を聞いたり本を読んだり、実際に様々な会社を見て、それぞれの取り組みの「良い所」だけを真似ているだけです。
多少当社に馴染むようなアレンジはしますが、基本的には他所の会社の「良いとこ取り」。
ああ、反面教師にすることもたまにはありますけどね。。。

でもそうしていると、そこから何らかの学びってあるんですよ。
「だからそうしていたんだ・・・」
「こうすると、そういうことにも繋がるんだな・・・」
って具合に。。。

他社が試行錯誤して作り上げたもの、その成功や失敗を、真似することで追体験できるわけです。
こんなお得なことありませんよね。
もしそこから何か問題が発生しても、修正していくことはそんなに難しいことではありませんし。

そういう意味では、やはり私は特段頭が良いわけでも、意識が高いわけでもないのでしょう・・・
なんか期待外れな感じで、申し訳ない気持ちになってしまいますね。。。

 

 

 真似ることは誰にでも出来るはずです。
クオリティはともかく、真似てみようという意思があればできますよね。
まずそこから始めてみるのも、問題解決や何かの成長のきっかけになるかも知れません。
それによって得られるものはきっとあるはずです。

遥か昔、それは偶然だったのか誰かの閃きだったのかは分かりませんが、人は火を使うようになり、道具を使って食料を得る様になりました。
そしてそれを見た人は、単純にそれを真似ていったんだと思います。
誰もが考えに考え抜いて辿り着いた答えだったり、天才的な閃きによってそこに至った訳じゃないはずですから。

子供のころ、テレビに映る人の真似ごとや、スポーツ選手の真似なんか誰もがやっていたじゃないですか。
私たちは本能的に、そうなりたいと思うのであれば真似をすることから始める様に出来ているんですよ。
まずは目指すべきロールモデルとなる人を見つけ、言葉や行動を真似ていくことで、次第に思考も似ていくのではないでしょうか。
そこから先は自分次第ですが、そう考えれば最初の一歩は踏み出し易くなるんじゃないかと思いますよ。

 

 

 

 

 


コメントを残す