リフレーミング

 

 

 物事にはいくつもの側面があります。
光と影、善と悪、表と裏といった二面性だけではなく、見方によってはもっと多角的なもの。
結局はその事象をどう捉えるかというだけなんです。
ピンチだと思っていたら実はチャンスだった・・・
そういうケースもありますよね。
だからこそ物事を一面的に捉えるのではなく、多面的に捉えなければなりません。

例えばコップに半分の水が入っているとします。
このコップには、まだ水が半分は入る
このコップには、あと半分しか水が入らない
このコップには、もう半分しか水が残っていない
このコップには、水がまだ半分も残っている
たった一つの事実でも、それをどう捉えるかでコップや水の意味や価値は変わりますよね。
そしてそれをどう捉えるかを決めるのは、他でもない自分自身なんです。

この物事の捉え方や枠組み(フレーム)を意図して変えることを「リフレーミング」と言います。
物事を別の視点で捉え直すこのリフレーミングは、この複雑な現代社会で生き抜いていく為には、とても重要なテクニックです。
自分では全て順風満帆で上手くいっていると思っていたのに、別の人から見たら崖っぷちを歩いている様な危険な状況だった・・・
実際そんな人いますよね。。。
逆に非常に厳しいネガティブな状況に立たされている状況であっても、見方一つで新たな意味や価値を見出すことができて、上手く感情や行動をコントロールできるようになることもあるでしょう。
このリフレーミングによって物事を再定義することは、今抱えている問題を克服する、一つのきっかけになるものなのかも知れません。

 

 7-Minutes Miracle

 

 

 過去に海外のメディアで「7-Minutes Miracle(7分間の奇跡)」として紹介されたこともある、新幹線の清掃員。
特に海外からの評価が非常に高いということはご存じの方も多いかも知れません。
かのアメリカの名門ハーバード大学でも、モチベーション高く清掃業務に臨むスタッフの姿や組織マネージメントを授業の教材として取り上げられたこともあるそうです。

新幹線が折り返し発車をするまでの停車時間は12分間。
そして乗客が乗降する時間が5分必要なので、清掃する時間は7分しかありません。
その僅か7分間で、全ての座席を清掃して整える必要があります。
それもたった20人くらいで・・・
なかなか至難の業ですよね。

如何に無駄なく、効率的に職務を遂行しなければならないかは想像に難くありません。
しかも厳しい時間制限の中でも、その仕事のクオリティーを落とすことなく、一つ一つの作業を丁寧にこなしていくわけです。
そして新幹線の入線や清掃を終えた際には整列して一礼。
その規律性や礼儀正しさは賞賛を受けて然るべきものです。
清掃員一人一人のモチベーションやプロ意識の高さの為せる業なんだと思います。

 

 でもこれも実は最初からそんな感じだったわけではないそうです。
以前はスタッフの定着率も低く、鉄道会社側からの評判もあまり良い方ではなかったんだとか。
それを問題視したこの会社は、風土改革を始めたそうです。

「清掃と言うのは日陰の仕事ではない」
「新幹線は清掃員がいなければ動かすことは出来ない」
「清掃員は新幹線を『掃除』というメンテナンスで支えている『技術者』である」
そういって現場で働く清掃員にスポットライトを当て、清掃の仕事を再定義、つまりリフレーミングすることから始めました。

もちろんそれだけですぐに全員の目の色が変わることはありません。
でもそれでも粘り強く清掃員が自身の仕事に誇りを持てる、ES(従業員満足度)向上に繋がる施策を次々に展開していったそうです。

そうした中で生まれたのが「新幹線劇場」。
きっかけは
「お客様が主役で私たちは脇役。新幹線劇場というステージの上で、お客様と私たちで素晴らしいシーンをつくっていこう」
と、ある女性スタッフが発した言葉だったそうです。

ただ日々繰り返される清掃作業を、新幹線劇場のショータイムとしてリフレーミングしたのです。
そういう想いが時間を掛けて次第に伝播していき、モチベーションの高いプロ集団が出来上がっていったということでした。
粘り強く変革に挑んだ会社も、自分たちの仕事を再定義して見つめ直すことができた清掃員たちも、どちらも素晴らしいですよね。

 

 エンジェルリポート

 

 

 その会社がES向上に取り組む施策で、代表的なものの一つに「エンジェルレポート」と言うものがあります。
これは各チームに「エンジェルリポーター」を指名し、このリポーターには仕事をする中で見たこと、聞いたことなどをどんどんリポート、つまり報告してもらうという仕組みです。
ポイントは「いいこと」だけをリポートするということ。
逆に悪いことはこのエンジェルリポートでは報告しないというルールにしました。

最近はあまり聞きませんが、昔は目安箱(意見箱)みたいなものを置いて、みんなの意見を汲み取る・・・なんてことをやっているところもありましたが、あれとはまた似て非なるものですね。
ああして欲しいこうして欲しいとか、〇〇がこんなことしていたとかこんなこと言われたとか・・・
そういう感じではありません。
だってリポートするのは「いいこと」だけですから。

目的は「監視する」ことでは無いんです。
お互いを尊重し認め合うこと、いいことは誰かが見てくれていて評価もされるという環境、そういう風土を醸成しようとしたのです。
そういう職場であれば、仕事に対するモチベーションも上がるでしょうし、エンゲージメントも向上しますよね。

振り返ってみると、そういう「いいこと」って実際私の耳にもそんなに入ってきません。
どちらかと言うと上司や部下の愚痴や不平不満など、ネガティブな報告がほとんどなんです。
いや、これは当社が悪いことが多いということではありませんよ。
実際多くの会社、多くの人がそんなものなんだろうと思います。
そういう困りごとを何とか解消してもらいたくて報告が上がってくるわけです。
いいことを報告することには、普段あまり必要性を感じませんよね。

もちろん悪いことを報告することは必要です。
問題があれば解決しなければなりません。
でもそれだけだとバランスが取れませんよね。
そんな報告ばかりのギスギスした職場では、みんなで協力して同じ目標に進んで行くという雰囲気は生まれ難いものです。

お互いを認め合い、褒め合うことが如何に大切な事か、改めて考え直すきっかけになりました。
そういう善行溢れる職場であれば、少々の悪いことも自浄作用が働いて自然と解消していくのでしょうね。
監視することが必要な場合もあるでしょうが、それよりももっと大切なものがこの「エンジェルリポート」にはあるように思いました。

 

 

 ゴールデンウィークも始まりましたし、中には新幹線で出掛けられる方もいるんじゃないかと思います。
ひょっとしたら「新幹線劇場」を見かける人もいるかも知れませんね。
私はまだその場面に居合わせたことがありませんので、いつかその劇場を観客として観てみたいなぁ・・・と思いました。

そうそう、その風土改革に大きく貢献したとされる「エンジェルリポート」にも興味が湧きました。
ちょうどこの4月から、ES向上に向けた取り組みを企画するようにスタッフに指示をしていたタイミングでもあるんです。
この取り組みはなかなか面白そうですよね。

別に何か仕組みを作らなければいけないわけでもないので、やろうと思えばすぐにでも始められそうな気もします。
それによって何らかの弊害や副作用が起きることも考え難いし、そんなにリスクを気にする必要もありません。
早速連休明けにでも打ち合わせをしてみたいと思います。