
普段何気なく使っている言葉も、似ているようで実は意味の異なるものがあります。
雰囲気が伝われば良いんじゃない?なんて言う方もいそうですが、やはり言葉として使う以上は正しく意味を知っておくに越したことはありません。
少し前、とあるスタッフに「もっと言葉を大切にすべきだ」という様な話をしたことがありました。
本人の意図した通りに相手に正しく伝わっていないことがとても多かったんです。
だってそれって、言った方も言われた方も、双方が不幸じゃないですか・・・
悪気が無いのは分かるのですが、相手に何かを伝えようとするなら、やはり言葉は大切にしなければなりません。
そういう意味でも、言葉の意味を正しく理解しておくのは大切なことですよね。
それにその言葉の意味を知る事で、何か課題解決に繋がるようなヒントを得られるかもしれません。
今回はそんな「似て非なる二つの言葉」についてです。
技術と技能
私たち製造業では日常的に使う言葉の「技術」と「技能」。
でも実際に使っている私たちでさえも、この言葉の意味の違いを意識して使っている人は少ないのではないでしょうか・・・
でもこの二つの言葉には、明確な意味の違いがあるんです。
技術
「技術」とは何かを取り扱ったり、物事を処理するための方法、手段のことを言います。
英語で言うと「Technology(テクノロジー)」。
テクノロジーというとイメージし易いですが、「技術」とは科学的なものの為、言語化や数値化ができ、知識として学び、伝えることが出来ます。
普遍的であり、知識の応用であるのが「技術」。
つまり「能力」ではないので、「属人的」なものではありません。
技能
「技能」とは物事を上手く処理するための腕前や能力のことです。
英語で言うと「Skill(スキル)」であり、個人が獲得する「能力」のことです。
人の能力ですから「属人的」なものであると言えますよね。
「技術」が知識として言葉や数値で学べるのに対して、「技能」は個人の訓練や経験を通じて得るものです。
そう考えると、この二つの言葉の違いがはっきりとイメージできるのではないでしょうか。。。
どちらが大事とかそういう話ではありません。
大切なのは
・ 「技術」を学んで「技能」を磨くこと
・ 磨いた「技能」を「技術化」すること
なんです。
分かり易く言うと
・ 「勘」や「コツ」ではなく、言語化(数値化)された知識の基に実務能力を高めること
・ 属人的な実務能力を言語化(数値化)して標準化(非属人化)し、暗黙知を形式知にすること
ということです。
例えばヒューマンエラーによる品質不具合が起きてしまった場合、表面的(属人的)な対策ばかり講じていると、ルールやチェックばかりが増えていって、根本的な解決には至りません。
そういった場合でも根本的な真因を追究し、可能な限り技術的な対策(非属人的な方法や手段)を講じて標準化することが肝要です。
よく改善活動では「PDCA」サイクルを回せ・・・なんて言いますよね。
「Plan(計画)⇒Do(実行)⇒Check(検証)⇒Action(改善)」です。
一方、品質活動では「SDCA」サイクルを回す必要があると言われます。
DCAは同じですが、最初の「S」は「Standardize(標準化)」です。
標準化するためには「言語化」することが必要であるが故、その為にも技術的(非属人的)対策が必要ということになります。
戦略と戦術
どちらも軍事的な語源ではありますが、ビジネスの場でもよく使う「戦略」と「戦術」。
この二つの言葉も似てはいますが、実はその意味は明確に異なります。
これもどちらが大事とかそんな話ではなく、どちらが欠けても成り立たない相関関係にあるものです。
戦略
「戦略」とは最終的な大きな目標、或いは長期的な目標を達成する為のアクションプランです。
この大きな目標を達成する為に「何をすれば良いのか」というシナリオであり、理想的な企業を目指すための指針が「戦略」。
成功の為の方向性や考え方を示し、全体像を見据えたマクロ的視点で練るのが「戦略」となります。
戦術
一方の「戦術」とは、「戦略」を実現するための手段のことです。
そこに至る為の個々のステップであり、チームが取る実際の行動や手段、具体的なタスクを指します。
戦術は戦略の下位の概念で、長期的且つ大局的な「戦略」に対して、「戦術」は短期的且つ局所的なミクロの視点で練っていく必要があります。
そして一つの戦略に対して、複数の戦術を立てて複合的に展開する事も出来ます。
ここまで来るとスタッフのみんなはピンとくるかもしれませんね。。。
大きな目的とは、大きな意味では企業理念であるし、もう少し具体的に言えば全体目標だったりするわけです。
それを実現するための「戦略」として、部門目標を立てています。
そしてその目標を達成する為の「戦術」として、個人目標だったり活動計画があったりするのです。
戦略だけで目標に辿り着こうとしても、恐らくどこにも辿り着けません。
戦術がなければ、目標達成までの道筋が見えないからです。
それぞれが何をどうすべきかが定まらず、具体的な活動は「個人任せ」「人任せ」となり、チームとして連携することも叶わなくなってしまいます。
逆に戦術だけでも目標を達成することは出来ません。
だって羅針盤も無く航海に出る、無謀な冒険の様なものですからね・・・
戦略の無い戦術は、ただの目的の無い仕事に過ぎません。
戦術は妥当性を失い、連続性や一貫性を欠くものになってしまうでしょう。
そうするとそのチームは、成果に繋がらない仕事に対して不満を感じる様になり、戦略的目標に向かえなくなることから、各々が自分勝手な行動と取るようになってしまいます。
だから「戦略」も「戦術」も大事なんです。
私たちは今、その訓練をしていると言っても良いのかも知れませんね。
ロジカルに物事を考えなければなりません。
例えば相手に何かを伝えたいとき、それが論理的であった方が相手も理解し易いですし、腹落ちして納得感も得られるというものです。
「俺の言うことを理解できないアイツが悪い」
そんなことばかり言っていたら、何にも前進しませんからね。
相手に伝わらないのは、伝え方に問題があるのかも知れませんよ・・・
感情的だったり、思慮の無い思い付きの言葉では、人は動きません。
何故なら、人を動かす為には、その人の心を動かさなければならないからです。
まあそれが難しいんですけどね。。。
でもだからこそ、言葉を大切にして欲しいんです。
特に「部下」のいる立場の皆さんは、それだけは忘れないでいて欲しいと思います。