
何事も「バランス」は大事です。
食事だってそうじゃないですか?
私も子供の頃は、「野菜もちゃんと食べなさい!!」なんて母親によく言われたものです。
未だに”三角食べ”(それぞれの料理を満遍なく食べ進めること)は出来ず、サラダ→スープ→メインみたいな食べ方しかできませんけど・・・
最近では「ワークライフバランス」なんて言葉もありますよね。
プライベートと仕事の両立、どちらも犠牲にしない充実した日常生活の実現のこと。
当社も例に漏れず取り組んでいる「働き方改革」の旗印とも言えます。
どちらが欠けても成り立たないものですから、これもやっぱり「バランス」が大事だと言えます。
そして私たち製造業における工程管理の上でも、とっても大事な「バランス」があります。
それが「ラインバランス」というもの。
これが崩れてしまうと、やはり生産が成り立たなくなってしまうんです・・・
だから常に管理者はラインバランスを整え、きれいにモノが流れる状態を目指して、「工程の整流化」に励むんです。
生産の安定は、品質の維持向上や収益の最大化に欠かせませんので、管理者にとっては永遠のテーマと言っても良いかも知れません。
リズム

工程の管理者が常に意識を置くべきこととして
・ タクトタイム
・ サイクルタイム
・ リードタイム
という、3つの時間があります。
そしてラインバランスを整えるのに特に大切なのは1,2段目の「タクトタイム」と「サイクルタイム」です。
ではまずタクトタイムから。
このタクトとは、オーケストラなどの指揮者が振る「指揮棒」や「拍子」という意味になります。
そしてそれを語源とした「タクトタイム」を一言で説明すると、
「一つの製品を作る時に均等なタイミングを計る標準作業時間」のことです。
ちょっと分かり難いですかね・・・
例えば一日の稼働時間(定時)が8時間として、週に5日稼働、一週間に必要な生産数が30個の物があったとします。
そうすると、まずその製品は「30個 ÷ 5日」という計算から、一日当たり6個生産する必要がある事になります。
一日で6個生産するのであれば「480分(8時間) ÷ 6個」で、1個当たり80分で作らなければなりません。
この「80分」がタクトタイムです。
求める公式は
[ タクトタイム=1日の定時稼働時間÷1日の生産必要数(最終的な生産必要数÷納期までの日数) ]
となります。
このタクトタイム80分の「工程A」に部品を供給する「前工程B」があるとします。
「前工程B」において、製品1個分の部品の供給が120分掛かってしまったらどうなるでしょうか?
「工程A」は40分の手待ち時間が発生してしまいますよね。
逆に「前工程B」が製品1個分の部品供給を30分で出来てしまったとしたら・・・
「工程A」がまだ1個目を作っているうちに、余分に2個分の部品が供給されることになってしまいます。
そう、つまりその最適なタイミングとなる標準時間が「タクトタイム」というものなんです。
続いてサイクルタイム。
これは一言で言うと「製品を一つ作る時に必要となる時間」という意味です。
でもこういう言い方をするとこんがらがって来てしまいますよね・・・
端的に言うと、タクトタイムは「顧客目線」で、必要数を生産するのに要する計算上の時間。
一方でサイクルタイムは「自社目線」で、必要数を生産するのに要する実力値、実績値から成る時間。
当社の使用している用語で言うと、製造部門に流している製作指示書に記載してある「ST(スタンダードタイム)」が、このサイクルタイムということです。
求める公式は
[ サイクルタイム=1日の稼働時間÷1日の生産実績数 ]
となります。
ではなぜ工程管理者がこの「タクトタイム」と「サイクルタイム」を意識しなければならないのか・・・
それはこの両方の値をイコールに近づけることが、工程の整流化に直結するからです。
・ タクトタイム = サイクルタイム
この時は供給の過不足が無く、無駄の無い生産が出来ている状態
・ タクトタイム > サイクルタイム
要求よりも早く作り過ぎていて、仕掛品や在庫品が停滞してしまう恐れのある状態
・ タクトタイム < サイクルタイム
生産が追いついておらず、次工程で欠品や手待ちの発生、或いは納期遅延の危険性がある状態
ということ。
例えば一つの製品「Z」を、工程a~dの4つの連続した工程で生産するとします。
工程aは、最終製品Zの部品を、一日当たり10台分生産できます。
工程bは、最終製品Zの部品を、一日当たり12台分生産できます。
工程cは、最終製品Zの部品を、一日当たり7台分生産できます。
工程dは、最終製品Zを、一日当たり11台生産できます。
この会社で何が起きるか想像してみます・・・
工程aはbへの部品供給が不足するので、毎日2台分の部品を能力以上に作らなければならず、残業が慢性化してしまいます。
逆にbは部品不足から手待ちが発生し、生産効率が著しく低下してしまいます。
cには仕掛かり在庫が停滞し、別に新たな管理工数や管理費用が発生するかもしれません。
dは日当たり4台分の生産余力を持て余し、その余剰経費によって全体の収益が悪化してしまいます。
ラインバランスが崩れると、良いことなんて一つも無いんですよね。。。
ではどうすれば良いのか・・・
まずこの会社、全工程がそのままの状態で、普通に定時で仕事を終えることを前提としたら、一日に何台の製品Zを生産する事が出来るのかを考えてみます。
答えは簡単ですよね・・・
この会社が一日で安定的に生産できる製品Zの数は、「7台」です。
だって工程cが一日当たり7台分の部品しか製造して流せない以上、連続する工程dにどれだけ高い生産能力があったとしても、一日7台までしか生産できませんから。。。
だからそんな時、工程管理者は早急に手を打たなければならないんです。
工程bの2台分の余剰生産能力と、工程dの1台分の余剰生産能力を、ボトルネックとなっている工程cに振り替えて、工程cが一日当たり3台分増産できるように生産能力を増強する必要があります。
そうしてラインバランスを整えれば、この会社は製品Zを一日あたり10台、定時間内に安定して生産する事が可能になるということ。
無駄な残業や経費を減らした上で、なお40%以上の増産です。
次のボーナスは、いつもより贅沢が出来るかも知れませんね。。。
もちろんこれは計算上の話ですので、現実はそんなに簡単なものではありません。
でも、基本的な考え方はこの通りです。
何をすべきか・・・

「効率を上げろ!」
「ムリ・ムダ・ムラを無くせ!!」
言うのは簡単ですよね・・・
でも掛け声だけで改善するなら苦労はしません。。。
では具体的に何をすれば良いのか・・・それをマネージするのが工程管理者の最大の職務と言っても過言ではありません。
「タクトタイムとサイクルタイムのギャップを埋めて、工場全体に一定の安定したリズムを作る」
「ボトルネックを解消して、ラインバランスを整える」
やるべきことは明らかですから。
その為には、まず「在るべき姿」を明確にして目的を定める。
その目的を果たす為の課題を洗い出し、その解決を目標として、それぞれにマイルストーンを置いて道筋を示す。
各フェーズで進捗を管理しながら、時にチームのメンバーの手を引き、時に背中を押して業務を主導的に前進させる。
目標の達成度合いを適正に評価すると共に、その活動の実績や効果を、プロセスも含めて分析、検証する。
これらを繰り返し、課題を解決しながらチームで協力して業務を推進していくことが、工程管理者の仕事です。
ではその課題解決のためには・・・
問題の原因を追究して、問題の発生した真因を明らかにする。
真因を突き止めたら、それを潰すための効果的な対策を立案する。
対策を講じたら、効果確認をした上で標準化、水平展開をして歯止めを掛ける。
スタッフのみんななら、耳にタコが出来るほど、いつも私に言われていることですね・・・
でも工程管理も、品質や5Sなどの改善活動も、根っこはやっぱり同じ。
これが基本姿勢であるべきだし、基本的な考え方であって欲しいんです。。。
今日こんな話をしたのは、実は近々人事を行う予定をしているからです。
元々は4月の予定でしたが、現状問題が深刻化してきているので、時期を早めることにしました。
当事者である本人も、どうやらこのブログを読んでいる様子・・・
事前に面談した時には、驚きと同時に大きな不安も抱えている様子だったので、今回は会社が要求し期待している事をまとめてみました。
まあいろいろと難しそうなことを書きましたが、きっと大丈夫!
実際、最初から先に書いたようなテクニカルなことを実践しようなんて思っちゃいません。
昨日も話したように、まずは「新しい体制で一緒に頑張ろう!」という空気作りからです。
そういう点では、私は全く心配なんかしていませんから。。。
少々迷ったり間違ったりしたって、軌道修正はいくらでもできます。
それに仕事のし易い環境作りについては、私も含めてみんなで最大限サポートするから、安心してください!
正直言うと(断られるかも・・・)なんて少し思っていたけど、
「やってみます!」
と言ってくれた時、私はとても嬉しかったんです。
必ず良い方向に向かうから、一緒に頑張ろうね!!