蓋をするな

 

 

 少し前まで、ネットニュースなんかでは某大手中古車販売店の保険金詐欺の話題ばかりでした。
まあそもそも色々問題の多い会社だったようで、パワハラや公道の植栽を除草剤で枯らせてしまう器物損壊などなど、次から次と問題が持ち上がって大騒ぎしていたものです。。。

 最近は専らアレですね。
某大手芸能事務所の創業者である、異常性癖オジによる性加害の問題ばかりです。
男色の小児性愛者なんか本当に気持ち悪いばかりですが、その事件を日本のマスコミが隠蔽し続けたおかげで海外メディアに取り上げられ、国連の人権理事会が出てくるまでに事が大きくなってしまいました
・・・

 これまでも大手企業による不正会計や不正検査など、度々問題になる事はありました。
その度にコンプライアンスだのガバナンスだのと言う話になり、企業側もその辺りを是正して再出発をしているんだと思います。
ただ最近の(異常性癖オジの事件は何十年も前からの話ですが・・・)この2社の問題は、ちょっと異質な感じがするんですよね。。。

 共通するのは創業者の強力なカリスマ性と、その人物を筆頭とした「同族経営」の企業体だという点。
同族経営というと何となく批判的に捉えている方が多いようですが、実は日本企業の90%以上がファミリービジネスなんだそうですよ。
かく言う当社も、その90%の中の一社です。
そういう意味では、当社にもこういった問題を起こす”芽”が眠っているのかも知れません。。。

 

 

 見て見ぬふり

  

 

 ああ、ファミリービジネスが問題だとは思っていませんよ。
アメリカなんかも全体の80~90%がファミリービジネスだそうですし、経営学ではファミリービジネスの方が総じて業績が良いという研究結果もあるみたいですからね。
本来ならファミリーの方がガバナンス(統治・統率)も利き易いものだと思うんです。
集団体制に比べて意思決定も迅速になりますし、秩序の維持にも寄与するところがあるのではないでしょうか。

 では今回の2社にどんな問題があったのか・・・
私はその共通点として「過度な権力の集中」に問題があったんじゃないかと思っています。
そしてその権力を持った人間がそれを濫用し、誤用したことが数々の不法行為に繋がっていったのではないかと。。。
金や人事権、意思決定権などの一極集中は、暴君を生む一つのきっかけには成り得ますよね。

 

 ただ一方で、私はそれだけで済ませてはいけないとも思うんです。
もちろん悪の根源であり、最も罪深いのは保険金の不正請求を強要した人物であり、性加害の問題で言えば異常性癖の変態オジであることは間違いありません。

 でもね、みんな知っていたんでしょう?
大手中古車販売店のサービススタッフは、それが違法行為だと知っててやっていたんですよね?
某大手芸能事務所のカリスマ経営者が性加害を行っている事、皆さんは初耳でした?
事実、20年程前ですにこの問題を告発した出版社をその大手芸能事務所側が名誉棄損だと提訴しましたが、高裁で「事実であることの証明があった」と認定をされています(芸能事務所側は上告したものの最高裁で棄却)。

 中古車販売店の社員やその芸能事務所に所属していた人達も、知ってて「見て見ぬふり」をしていたんですよね。
私はそれが本質的な問題だと思うんです。
恫喝されるかも、降格や左遷されるかも・・・そんな恐れがあったのかも知れません。
でもだからといって社内で蔓延している保険金の不正請求を見て見ぬふりする、或いは自らもその不法行為に手を染める、そんなことはあってはならない筈です。
 仕事が無くなるのが怖い、早くデビューしたい、みんな通った道だから・・・そうやって自らの保身の為に悪質な性加害に対しても口を噤んでいた・・・だからその変態オジも歯止めが効かなくなり、次の被害者が生まれたと言っても過言ではないと思います。

 今回はたまたま良心の呵責に苛まれたサービススタッフの動画投稿や、海外メディアが性加害を追究しだしたことで事が大きく動き出しましたが、多かれ少なかれそんな「暴君」は現実に存在するし、今後も新たに現れる可能性は大いにあるんです。
でもそんな時にその不正や不法行為を見て見ぬふりをするということは、その人自身もそれを許容することであるのと同時に、その暴君が更に君臨することを助長する行為に他なりません。

 

 恥ずかしながら、当社も似たようなことが問題になったことがあります。
一つは、以前とある若手社員がチームの秩序を著しく損なう様な行為をし続けており、それを周囲の先輩社員や上司が適切な指導を行わずに放置していた時。
もう一つはつい最近の事ですが、あるスタッフが困っているのを周りのスタッフはなんとなく知っていたにも関わらず、救いの手を差し伸べなかった時。

私はもちろん原因となった当事者にも厳しく指導はしましたが、それを見て見ぬ振りしたスタッフにに対しても同様に「それでは同罪だろう!」と説きました。
チームとして仕事をしている以上それは絶対にあってはならないことだし、それが常態化してしまっては、本当に問題が起きた時に自浄出来ない組織になってしまいます。
そんな怖いことってありませんよね。。。

 

 例えばサービス残業が当たり前になっていて残業代が出ないなど、法令を無視して隷属的な労働を強いられる「どブラック企業」があったとします。
でも考えてみて下さい、そのどブラック企業は、その環境を甘んじて受け入れてくれている人がいるから、存在し続けられているんです。
そのどブラック企業がブラックで居続けるのを、被害者と称するその人自身が手助けしているのと同じことなんですよ。
そういう意味では、そこでそれを見て見ぬふりして働く人も同罪であると私は思うんです。。。

 

 

  臭い物には・・・

 

 

 どんな企業にも問題は起こり得ます。
だからこそそれが大事にならぬ様に芽のうちに摘み取る努力をし、事の影響を最小化する為に手立てを講じる訳です。
それでも問題が表面化した時は、やはりその問題に真正面から対峙し、根本から是正に取り組む必要があります。

 証拠隠滅とばかりに業務用に使っていたLINEを削除するよう全社員に命じた大手中古車販売店、「知らなかった」と動画で釈明するだけで幕引きを図った大手芸能事務所・・・
そんな初動からも、「臭いものには蓋をして事無きを得よう」とする姿勢や企業風土が透けて見えますよね。。。

 それでは絶対に同じ過ちは繰り返されるものです。
喉元過ぎれば熱さ忘れる・・・というヤツですね。
きっとこれまでも様々なトラブルがあり、それらを隠蔽したり握り潰したりしてきたであろうことは想像に難くないのではないでしょうか。

 

 昨日部長が私の職場に来て、生産の進捗が芳しくないと報告をしてくれました。
現場を見れば一目瞭然ですし、ネットワーク化されたシステム上でもその状況は把握できています。
それでも「悪い報告ほど早く届けて欲しい」と言っている私に対して、直接報告してくれました。

「そっか・・・なんでそうなっちゃったのかな?この前の会議での話はどうなった?」
「全体量の把握が甘くて、計画通りには進んでいません・・・」
「それはマズいね・・・今は目の前にある物以外の状況も掴めてる?今後はどう進めていくの?」
といった感じで善後策を打ち合わせしました。
問題が起きたら直ちに原因を炙り出して対策を打つ・・・事の大小ではなく、日常的にそう習慣付けしていかなければなりません。

 

 当社の場合、逆に意図せずして「臭いものに蓋」をしてしまうケースが時々あります。
良かれと思ってやった他の人のフォローやミスのケア、例えばある人がやるべき事を忘れているのに他の人が気付き、気付いた人が気を回してその仕事をやってしまった場合などです。
いや、協力して仕事をしていくのはすごく良いことですよ。
それは否定しません。
でも、時にそれは問題を”隠す”ことになってしまい兼ねないんです。

 問題が表面化する前に済ませてしまう事で、当事者の責任意識が希薄化してしまったり、次に問題が起こらない為の対策を打つ機会を失してしまったり・・・
決して問題を起こして欲しいわけではないですよ。
でもそういう時はせめて「忙しいならこっちでやっておこうか?」とか「これ忘れてたのやっておいたけど、今度からは気を付けてね」なんて声掛けがあると良いかも知れませんね。。。

 

 

 何か問題があったり失敗をしてしまった時、それは現状をもっと良くしたり失敗を二度と繰り返さない様に対策をする為の、言わば「チャンス」であり「成長の機会」なんです。
だからこそ、その問題を早く露わにすることが必要だし、失敗を恐れずに何事もチャレンジしてみることが必要なんだと思います。

 まあ先に述べた二社(大手中古車販売店と大手芸能事務所)の問題は、完全な法令違反や刑事罰の対象となる様な事例だし、実際に被害者の方も多数いるわけですから、「成長の機会」なんて悠長なことを言っている場合じゃないですけどね・・・
ここまで来ると、この二社は本当に解体的出直しを図るしかないと思いますが。。。

 

 とは言え、業種や事業規模が全然違うものの、こういう企業の不祥事を対岸の火事として済ましてしまうのもどうかと思います。
事は違えど、やはり当社の中にも問題の芽はあるはずですからね。
「臭いものに蓋をする」のではなく、もちろん問題が発生するのは可能限抑える努力をしつつも、起きた問題に対しては真摯に向き合って正攻法で潰していく「正常な組織」で在りたいと思います。

 何かを隠して後ろめたい想いを抱えていたら、この道を真っすぐに進むことは出来ません。
私たちが王道のど真ん中を大手を振って歩いていく為にも、「蓋をしない」姿勢は貫いていきたいものですね。